自己啓発マニアに告ぐ

一時期、アホみたいに自己啓発本や所謂意識高い系が読むようなハウツー、ビジネス本や哲学に狂っていた時期がある。

そういった関連の本を、最初に手にした当時のおれは将来に対して大きな不安を抱えていた。間違いなくそれが反動となったのだろうが、本の内容がスーッと心の奥底まで沁みわたってきて、それはそれはとても感動したのをよく憶えている。

 

それからのおれは「そういった本」の中毒となって、毎日書店に通い、「そういった本」を貪り読んだ。朝早起きして珈琲ショップでそれらの勉強してから仕事に行くとか今考えると背筋が凍るような寒い行動を真剣にしていた。

 

当時は意識していなかったが、おれは多分そうした「意識高い系」の行動をする自分に酔っていて、本に書かれている内容を盲信して、そうしたマニュアル通りの行動を実践していれば全部がうまくいくと思っていたのだろう。

 

また「そういった本」が中心ではあったもののとにかく本は大量に読んでいたので、多少の知識はついていたようだった。

その知識がついたというおれの一部分だけをみた友人からは「なんかちょっという事がかわったね」とか「すげえ。そんな知識あったんだ」みたいな比較的ポジティブな事を言われるようになったので(おれの友達は基本的に良い奴等が多いのだ)、余計におれは自分が頭良くなっていると勘違いして、さらに以前に増して自分の行動を肯定するようになった。

 

きちんと正しい行動をとっていれば、絶対に成功する。うまくいかないのは自分の何かが間違っているかもしくは今後自分が目標に到達すべく試練であると信じていた。

 

正しい事やっていれば、必ず正しい事が起こる?

そんな単純に世の中が出来ていれば、誰も苦しんだり悪い事なんて起こらない。

悪い奴はすべてちゃんと裁かれて、罪なき人が理不尽に死んだりしない。

現実はもっと自分では理解できないくらい曖昧で混沌としていて理不尽なものだ。

 

そんな普通に考えればたどりつく事をスルーし続けた世間知らずだったおれは、自分に都合のいい言葉にだけ耳を傾けて毎日本を開く事で目新しい情報に触れて自分が高まっているような感覚に陥っていた。

 

今思うとそれだけも膨大な時間を無駄にしてきたと後悔してしまいそうになるが、それでも最初の1~2年くらいは本を買って読むだけだったので全然マシだった。

 

問題はそこから。

 

なんとなく連絡を取って一緒に飯を食う事になった同級生と何故か「そういう話」になった。

そしたらそいつはおれが1~2年でつけた「そういった知識」を既に持っていて、おれは嬉しくなった。同様にそいつもおれが感じたような言葉をおれにかけてくれて、それまでのそいつのイメージはすべて吹っ飛んで、親友だと思った。

 

おれはその日からそいつとしょっちゅうつるむことになった。

 

つづく